アート・オブ・タッチ プロジェクトについて
人に触れる、自然に触れる。
触れることは世界へ働きかける土台になる行為なのです。
私は20年ほど前にアロマセラピストとして仕事をはじめました。
自分の仕事場には、マッサージやボディワークを受けたい人がやってきます。
また、病院や施設、イベントなどに出向いてワークをすることもありました。
自分が仕事として選んだ場所は、
いずれも人をホリスティックに見ていくという価値観が許容された場所でした。
しかし、今、多くの人にとって「自分=身体」であり、
身体が壊れたら機械のように修理するものという見方が一般的でしょう。
なので、私がセッションを提供する場は、
単にそこからの避難所にしか過ぎないのでした。
避難所としての役割はある程度は致し方ないとしても、
社会全体が人を本来の人として扱う世界であれば、
いつかは特別な場所が不要になっていくはずです。
そのための取り組みもしてきましたが、
社会の状況は悪くなる一方で、
避難所としての「癒しの場」ばかりが
どんどんできているような気がします。
人の身体に触れることで、感情や思考、魂にまで触れることが可能です。
意識しようがするまいが、触れる人の意識は触れられる人に伝わります。
例えば、満員電車の不快感の中での身体接触、
触れられるということは、心も体も委縮させられます。
心地よい場所で、信頼している人に触れられる場合は、
心も体もほっとし、緊張を解放することができます。
人や動物やモノに触れる時、何が起きているのかを知り、
自分らしさを保ちながら、敬意をもって人に触れていく。
それができるならば、触れるという行為に限らず、
人とのコミュニケーション、関係性のとり方の質は、
変化していくように思います。
「人や世界をホリスティックにとらえる」という概念を
『触れる』ことから体験的に学ぶことも可能でしょう。
『触れる』という、何も特別ではない行為について、
何が起きているかを知り、より良い方法を選択できるならば、
自分も人も、生き生きとし、楽に生きることができるでしょう。
自分と他者の間に起きる小さな変化は、
社会の価値観を根底から変化させる力にも
なりうるのではないかと思います。
ストレスフルな癒しの時代からの
一刻も早い脱却をめざし、
アート・オブ・タッチプロジェクトを
はじめたいと思います。